50数年前までは「ゴルフは紳士のスポーツ」といわれていました。しかし高度経済成長期やバブルを経て「ゴルフは完全に大衆化スポーツ」になりました。
ゴルフは紳士のスポーツの゛紳士゛を強調するのはプレー料金が高く高嶺の花であたったこともありますが、高貴なスポーツであるという意味も含まれています。何よりもジェントルマンシップに則ったスポーツであるからこそ゛紳士のスポーツ゛といわれていた所以です。
昭和40年代からゴルフが大衆化するとともに、ゴルファーのマナーやエチケットが乱れに乱れています。ゴルフという競技は審判のいない自己申告即ち、自らの行動は全て自らが負う自己責任を旨としたスポーツです。
審判がいないことを良いことに不正やズルをする輩(やから)が後を絶ちません。ナイスショットした球がディボット跡にあれば誰も見ていないことを良いことに数センチ蹴り出したり、OBラインの外にある球を「セーフ!」と叫び同伴者の確認を待たずにさっさと打ち出したりと、この手の話は枚挙に遑(いとま)がありません。
このような明らかなルール違反ではないものの、同伴者や前後のプレーヤーに対する気遣いや配慮に欠けた無神経なプレーヤーも増殖しています。恐ろしくプレーの遅い人、あるいはグリーンにボール跡をつけたにもかかわらず修復しない人、ゴルフシューズでグリーン面を引きずって傷つけたりする非常識なゴルファーも増殖中です。
こうした非常識なゴルファーの振る舞いを見たり聞いたりする度に思い出すのが球聖ボビー・ジョーンズのエピソードです。
1925年の全米オープンでのこと。B・ジョーンズは1打リードで優勝に限りなく近かったのですが、ラフにある球をアドレスした際に球が動いたと自己申告して自ら1打罰付加してスコアカードを提出しました。この結果、プレーオフとなり敗れて優勝を逃してしまいました。アドレスの際に球が動いたのを誰も見ていない、B・ジョーンズが申告しなければ誰も判らず1打リードのまま優勝していたかもしれません。
このB・ジョーンズの行為に人々は賞賛したといいいます。しかしB・ジョーンズ曰く「ゴルファーとして当たり前のことをしただけ。人のお金を盗まなかったからといって、私を褒めるのはおかしい」と平然と語ったといいます。
プレー中に悪魔のささやきが聞こえてきたら、このB・ジョーンズの言葉を思い出してください。
奈良柳生カントリークラブ 総支配人・阪口 勇